【小林秀雄の言葉】 欧米人には小我をもって自己と考える欠点があり・・・
欧米人には小我をもって自己と考える欠点があり、それが指導層を貫いているようです。今の人類文化というものは、一口に言えば、内容は生存競争だと思います。生存競争が内容である間は、人類時代とは言えない、獣類時代である。
しかも獣類時代のうちで最も生存競争の熾烈な時代だと思います。ここでみずからを滅ぼさずにすんだら、人類時代の第一ページが始まると思います。
たいていは滅んでしまうと思うのですけれども、もしできるならば、人間とはどういうものか、したがって文化とはどういうものであるべきかということから、もう一度考え直すのが良いだろう、そう思っています。それはおもしろく楽しいことだと思うのです。
小林秀雄
1902~1983 東京生まれ。東京帝大仏文科卒。1929(昭和4年)年、「様々なる意匠」が「改造」誌の懸賞評論二席入選。以後、「アシルと亀の子」はじめ、独創的な批評活動に入り、『私小説論』『ドストエフスキイの生活』等を刊行。戦中は「無情という事」以下、古典に関する随想を手がけ、終戦の翌年「モオツァルト」を発表。1967年文化勲章受章。連載11年に及ぶ晩年の大作『本居宣長』(1977年刊行)で日本文学大賞受賞。